空海入門 (角川ソフィア文庫)オンラインブックダウンロード
空海入門 (角川ソフィア文庫)
によって 加藤 精一
3.7 5つ星のうち(16人の読者)
空海入門 (角川ソフィア文庫)オンラインブックダウンロード - 革新的な思想で宗教界を導き、後に弘法大師と尊称された空海。その生涯と事績を丹念にたどり、『三教指帰』『弁顕密二経論』『秘蔵宝鑰』をはじめとする著作を紹介。何者にも引きずられない、人間空海の魅力に迫る!
空海入門 (角川ソフィア文庫)の詳細
以下は、空海入門 (角川ソフィア文庫)に関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
本書は第一章で「歴史上の人物としての空海の生涯」に的を絞って、讃岐国(香川県)に生まれた佐伯真魚こと空海がどのような一生を歩んだのかが具体的に描かれており、この点については空海入門の名に違わず勉強になった。空海と言えば遣唐使船で唐に渡って、後に日本で真言宗を開いたことは日本史でも学ぶところだが、その経緯についての説明などあくまで一人の人間として焦点を合わせた記述は具体性があってわかりやすい。第一章はp1~p70で終わり、第二章からは「著作と思想」の紹介がp122まで続く。第二章は仏教上の専門用語が頻出し、入門と銘打つにはかなり複雑な内容だと感じた。しかし、第二章までに関しては空海の入門書として一読の価値はあったと思う。問題だと感じたのは後半の約半分を占める第三章「空海と現代」以降であり、ここでは空海の解説よりも作者の主張が色濃く打ち出されて素直に内容に首肯しかねる部分が多くなった。例えばp138「これまでの世界の多くの宗教は、教理の上でまったく非寛容である。そして非寛容な宗教を持ち続けている限り、彼らには、世界の平和、人類の安寧などを説く資格などない」p153「(空海の思想の)この広さ、寛容さは、世界に類を見ない日本の美風である(省略)ところが、西欧の人々がキリスト教の立場からこうした日本人の精神生活をみると、その本質とすぐれた点がどうしても見抜けない」p163「血で血を洗うような宗教戦争は日本には起きていない。まさにこの状態は、すばらしいといえるのではないのか。・・・宗教の対立を起こさないだけ、(日本人は)世界中でもっとも正当な国民なのではないか」という具合であり、正直に言ってなんだこれはと感じた。今まで空海の思想は他の宗派の教義も包含した寛容なものだったと作者自ら説明してきたにも関わらず、後半ではまるで空海の思想以外は邪道とでも言わんばかりの非寛容さに様変わりする。作者は例としてキリスト教やイスラム教をあげているが、それらもあくまで仏教の優越性を説明するための比較対象でしか扱われていない。第一章で空海は当時の真のコスモポリタンだと言っておいて、この記述は上手い例えだと思って読んでいたのに、第三章では日本人の多宗教・寛容といった宗教上の特質を外国人は理解できないという、もはや使い古された感さえある日本人の日本人に対する特別視が行われている。そもそも外国人が日本人を理解できないと主張するのなら、それを言う日本人は外国人を理解できているのかという問題が先にあるはずだが、これに対する回答は例に漏れず本書でも含まれていない。また、記述の正確さという点でも、p141で「ある評論家は、・・・」と引用があるものの、それが誰であるかは本文でも脚注でも言及がなく、一体誰を指しているのか根拠不明である。以上のように、前半部が割とまとまっていただけに、後半部の主張の拙さが非常に残念である。
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